高齢者問題研究会
~高齢者の離婚~

1.離婚の年次推移

(1)離婚件数の年次推移

 →離婚件数は,平成15年以降は減少

(2)各届出年に同居をやめ届け出た離婚件数の割合の年次推移

 →平成14年以降,若干減少傾向

(3)同年別居の年齢階級別離婚率及び有配偶離婚率の年次推移

 →どの年齢でも上昇
  有配偶離婚率でみれば,若年ほど離婚率が高く,高齢になるほど低い。

(4)同年同居の年齢別婚姻率の合計及び同年別居の年齢別離婚率の合計の年次推移

 →昭和55年以降,男女ともに年齢別婚姻率の合計は低下傾向
  他方,年齢別離婚率の合計は上昇傾向
  cf 結婚した3組に1組が離婚する。
    結婚する4組に1組は再婚。

2.離婚で問題となる点

(1)法律上の問題

①離婚
 民法770条1項 夫婦の一方は,次に掲げる場合に限り,離婚の訴えを提起することができる。
  1号 配偶者に不貞な行為があったとき。
  2号 配偶者から悪意で遺棄されたとき。
  3号 配偶者の生死が3年以上明らかでないとき。
  5号 その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。
 2項 裁判所は,前項第1号から第4号までに掲げる事由がある場合であっても,一切の事情を考慮して婚姻の継続を相当と認めるときは,離婚の請求を棄却することができる。

②親権

③養育費

④慰謝料

⑤財産分与
 民法768条 1項 協議上の離婚をした者の一方は,相手方に対して財産の分与を請求することができる。
 2項 3項  (略) 

⑥年金分割

⑦子の面会交流

(2)事実上の問題

離婚後の生活

3.高齢者の離婚で問題となる点

 (1)法律上の問題

①配偶者が認知症であれば,4号で離婚できるか?
 ア 最判昭和33年7月25日
2項を根拠に,強度の精神病で回復の見込みのない場合でも,諸般の事情を考慮し,病者の今後の療養,生活等についてできるかぎりの具体的方策を講じ,ある程度において,前途にその方途の見込みのついた上でなければ,直ちに婚姻関係を廃絶することは不相当と認めて,離婚請求を許さないとした。  イ 最判昭45年11月24日
「妻が強度の精神病にかかり回復の見込みがない場合において、妻の実家が夫の支出をあてにしなければ療養費に事欠くような資産状態ではなく、他方、夫は、妻のため十分な療養費を支出できる程に生活に余裕がないにもかかわらず、過去の療養費については、妻の後見人である父との間で分割支払の示談をしてこれに従つて全部支払を完了し、将来の療養費についても可能な範囲の支払をなす意思のあることを裁判所の試みた和解において表明し、夫婦間の子をその出生当時から引き続き養育している等判示事情のあるときは、民法770条2項により離婚の請求を棄却すべき場合にはあたらない。」→通常,認知症というだけで,4号で離婚することはできない。

②退職金を他方が使い込み,分与すべき財産がない。相手が仕事をしていないため,差押えができない(年金は差押えができない)。

③平成20年4月より,第3号被保険者期間について厚生年金の分割制度が施行された。もっとも,平成20年4月1日より前の婚姻期間については年金分割の合意が必要

(2)事実上の問題

 高齢女性の貧困
 母子世帯の突出した貧困
 離別女性が高リスク

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