外国人と家族法

事例1 外国人の遺言

Aさん(65歳,B国籍)は,来日30年で,妻と子ども3人がいます(妻子は日本国籍)

①遺言を作るには,どうしたらいいですか。
②日本の公証役場で作れますか。
③自筆証書遺言でもいいですか。

①②遺言の作り方~遺言の方式の準拠法

行為地法,遺言成立又は死亡当時の国籍国法、住所地法,常居所地法,不動産所在地法のいずれかであれば有効(遺言方式準拠法2条)。
多くの国が,同様の法制度を採用している。
→ 日本の公証役場で作成できると考えてよい。

③自筆証書遺言でもいいですか。

→おすすめしません。
理由)相続人の確定作業が困難で,日本の裁判所の検認に時間がかかります。
また,外国に財産が有る場合,執行できない可能性があります。

遺言の成立と効力

日本の公証役場で,遺言を作成しても,

遺言の成立(遺言能力,意思表示の瑕疵)と効力(意思表示の拘束力,遺言執行者の権限,撤回など) は,本国法に準拠する(通則法37条)

例えば,相続分の指定の効力,認定できるかなどは,Aさんの本国法に準拠する。
*撤回に注意(日本のように緩やかとは限らない)

参考)公正証書遺言の外国での執行

公正証書遺言と翻訳の認証(公証役場)
   ↓
公証人の所属する法務局の法務局長の証明
   ↓
外務省の公印証明(アポスティーユ「証明付箋」)
   ↓  (条約加盟国は領事認証は省略)


   ↓
海外の各金融機関や検認裁判所へ

余談)アメリカでの遺言執行(各州によって異なる)

検認裁判所による管理
 プロベート手続(probate 「検認裁判,遺産管理」と訳されている。)

遺言執行者,遺産管理人,人格代理人の選任,遺言の有効性の判断,遺産の管理,遺産の分配を行う。
 プロベートの対象外  →少額財産,共有,保険,信託

事例2 国際相続

来日20年のCさん(D国籍)の相続に,お子さんが相談に来られました。遺言はないようです。
配偶者と子どもが2名です。
法定相続分は日本民法だと,配偶者2分の1,子ども4分の1ずつですが,これでいいですか。

相続の準拠法は,被相続人の本国法 (通則法36条)。
→D国法が適用
相続原因,法定相続人,相続分,承認・放棄など,全てが本国法

<参考>

韓国: 配偶者と子は,1:1.5
中国: 第一順位は,配偶者,子,父母。相続分は均分
アメリカ: 複雑

事例3 成年後見

日本に住むEさん(92歳,F国籍)の,お子さんが相談に来られました。
銀行でEさん名義の口座からお金を引き出そうとすると,判断能力云々と言われ,成年後見の話をされました。
外国籍ですが,成年後見は利用できますか?

1 開始の審判

(精神障害の程度,申立権者,行為能力の制限)
日本に住居所,日本国籍があれば,日本法
 →Eさんの後見開始審判は,日本の家裁ができる。

2 後見事務

原則として本国法
しかし,日本において後見開始審判をした場合などは,日本法が適用される。
 →後見人の事務,家裁の監督は日本法が適用。
 →Eさんの場合も,ほぼ日本の後見事件と同様。

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